今日から、少しずつ、人格適応論に出てくる適応タイプについて、詳しくご説明します。まず、それぞれの適応タイプについて、オペラの登場人物を用いてご説明します。オペラなんて興味がない、という方も多いと思います。映画やマンガの主人公でももちろん、説明できます。そして、オペラだと台本が入手しやすいので、細かいところまで説明しやすくなります。映画やドラマをみていて、気になれば、またその都度ご紹介します。

今日ここでご紹介するのは、イタリアのオペラ作曲家の大家、ジャコモ・プッチーニの名作「ラ・ボエーム」のヒロイン、ミミです。
舞台は1830年ころのパリ。寒い冬のクリスマス・イブ。「ボエーム」とは「ボヘミアン」のことで、当時パリにいた貧しいながらも夢と希望にあふれて生活をしていた芸術家の卵のことです。
詩人のロドルフォはそんな「ボヘミアン」の一人。友達と楽しいひと時を過ごし、外にお酒を飲みにいくことになりました。ロドルフォは原稿を書かなければならない仕事があり、終わってから合流することになります。そんなとき、裁縫の仕事をしている女性、ミミがロウソクの火を借りに入ってきます。ロドルフォがミミの手に触れたとき、自己紹介を兼ねて情熱的な歌を歌います(「冷たい手」)。このロドルフォの歌を受けて歌い出すミミの歌「私はミミ」は、とても「想像型」の特色を表しています。

「私は家や外で麻や絹に刺しゅうをしています。心おだやかで幸せで、ゆりやばらをつくるのが慰めになっています」
「私は優しい魔力を持っていて、愛や青春について語ってくれるもの、夢や空想について語ってくれる、つまり詩という名を持っているもの、それが好きなんですわ」

「想像型」の方の特色は、文字通り、想像・空想の世界にいます。周りの人からは何を思っているかはわかりませんが、詩を書いたり、絵を描いたり、音楽を演奏したり、自分のペースで物事を進め、美しい心の世界を詩、絵、音楽などを通じて表現するのが得意です。

「私はたった一人で、自分の食事の用意をします。いつもミサに行くというわけではありませんが、神様にはよくお祈りをしますわ」
「私は一人で、一人ぼっちであちらの小さなお部屋に暮らしています。屋根の上と空をながめながら」

ここでも「想像型」の特色がよく出ています。人間関係の関わり方では、一人または一対一を好み、複数の人と一度に関わったり、集団での関わりは好みません。ここで出てくる「ミサ」とはキリスト教カトリックの集会のことです。集会には参加せず、神様と二人、または自分一人、というのも「想像型」らしいです。そして、屋根の上と空をながめながら、どんなことを空想しているのでしょうか。

「でも雪がとけてくると、最初の太陽が私のものなんです。四月の最初のくちづけが私のものなんです。最初の太陽が私のものなんです」

この歌で一番私が好きなところです。「想像型」の方が持っている心の美しさを感じる部分です。

「鉢の中ではばらのつぼみが花開き、その花びら一枚一枚のかおりを吸いこむの! 花のかおりはなんて素敵なのでしょう」
「でも私がつくる花は、かおりを持たないのよ」

ここもいかにも「想像型」の方らしいです。自分が好きな花を自分のペースで育てつつも「私がつくる花は、かおりを持たないのよ」とあきらめている雰囲気です。
「想像型」の方は、自分が欲しいもの、自分の欲求が何かが苦手なのです。だからこそ、周りの人は、具体的で何をして欲しいのか、働きかけたり指示をだすことがとても大切になるわけです。

以上述べてきたことを仕事や就職活動ではどのようなことになるでしょうか。
「想像型」の方は、欲求から引きこもって空想の世界に入るので、何をしたいのか、何を考えているのかが周囲からみえにくいです。
したがって、周りの人は、何かをして欲しいときに、具体的で明確に「~してください」と働きかけることが大切です。また一人でやれるペースを大切にすることも必要です。チームワークは苦手でも、仕事ができない、ということではありません。
クリエイティブ系の仕事で独創的な仕事をするでしょうし、事務関係の仕事でもとても丁寧な仕事をすることでしょう。
就職活動でいえば、自己PRはとても上手です。同時に、志望動機はとても苦手です(欲求から引きこもるため)。

「想像型」の方は自分の長所を大切にしていただきたいし、周りの方は「想像型」の特色を理解して接して欲しい、と思います。

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