引き続いて、オペラの登場人物を通じて人格適応論の適応タイプについて、詳しくご説明します。

今日は「感情型」。イタリア・オペラの大家の大傑作「トスカ」に登場するトスカという女性がその典型例です。

「感情型」の方の一般的な特色としては、人と関わるのが好きで、社交的で、何となくやさしそうな雰囲気をもっています。人に喜んでもらうことをとても大切にし、別のいい方をすると人が喜んでくれないと理知的な判断が鈍ったり、という問題ももっています。
キーワードは「人に喜んでもらうこと」です。

さて、オペラに話を戻します。
時は1800の6月、ローマ。フランスで革命が起こり、自由と平等の精神をナポレオンがヨーロッパ各地に広めようと戦争を繰り返していた時代です。当然、旧態依然とした身分・階級制で人々を支配して利益を得ようとする人々は困るわけです。
トスカは人気歌手、その恋人カヴァラドッシは画家で「ナポレオン派」です。
第1幕。カヴァラドッシが教会からの注文で美しい女性の絵を描いています。その女性の美しさと、トスカに対する情熱的な思いをこめたの歌が有名な「妙なる調和」です。
その後、トスカがカヴァラドッシの仕事場にやってきます。
いかにも「感情型」の女性らしい、愛の歌を歌います。

「すっかり緑のなかに埋もれて、私たちを待っている小さな家を、懐かしくお思いにならないの?
神秘と愛に満ち、人の世の誰にも知られぬ、聖なる住まいを懐かしくお思いにならないの?
あなたに寄り添って聞く夜の声は、静かな欲し明かりの影を通ってのぼってきます」
「狂おしい恋が、トスカの中で燃えています」

「愛・恋」「寄り添う」、「感情型」の方が好きそうなことばですね。

同時に、嫉妬心を抱きやすいのも「感情型」の方の特色でもあります。トスカはカヴァラドッシが描いている女性に現実のモデルがいると思い、カヴァラドッシに詰め寄ります。
「あの人に会ったの? あの女があなたを愛しているの? あなたがあの女を好きになったの?」

このトスカの嫉妬心を利用しようとしたのが、反ナポレオン派・旧体制派の警視総監スカルピアです。

そこで第2幕。
スカルピアは、カヴァラドッシを捕えて拷問にかけます。カヴァラドッシはスカルピアが追っている政治犯をかくまっているので、スカルピアは拷問にかけて吐かせようとします。そんなとき、トスカがあらわれます。カヴァラドッシはトスカに秘密を明かさないように確認しますが、優しい「感情型」のトスカにとってはとても耐え難いことです。秘密を白状します。さらにスカルピアはカヴァラドッシを釈放する条件として、トスカに体の関係までせまります。
ここでトスカが歌うのが、有名な「歌に生き、恋に生き」です。

「私は歌に生き、恋に生き、決して命あるものに悪いことをしませんでした。
私が知る限りの多くの貧しい人たちには、ひそかに手を伸ばしてお救いしましたのに」

人に喜んでもらおう、人のために生きるのが生きがいな「感情型」の方の姿があらわれています。

「宝石の数々を聖母のマントに捧げ、ひときわ美しく輝くみ空の星に歌を捧げましたのに」

自分がもっている物や能力を人に捧げて喜んでもらおうとしているところも生きがいとしているところも「感情型」らしいです。

「悩んでいる今、なぜ主はこのようにお報いになるのでしょう」

恐らく、「信念型」や「思考型」であれば、こんなピンチのときに神様の手を借りず、自分の力で考えて何とかするでしょう。

そして、トスカはどうしたか、というと机のナイフを取り上げ、「これがトスカの接吻よ!」といってスカルピアを刺殺します。
2幕最後のトスカのセリフは「この男のために、ローマ全体が震えあがっていたのだわ」

このセリフの後、トスカはどうするのでしょうか。
死体の横に2本のロウソクを置き、さらに十字架にかけられたキリストの像をスカルピアの胸の上に置いて跪くのです。
これだけ自分やローマの人々の圧力を与えた相手でも、気遣いをするところも、いかにも「感情型」らしいです。

そんな「感情型」の方。
やさしくて思いやりがあって、人づきあいが上手です。いろいろな職場で人から愛されることでしょう。
とくにほめことば「○○さんがいてくれるからこそ、みんなが気持ちよく仕事ができるんだ」と、「感情型」の方が存在していることそのものを大切してあげてください。
とくに、感情が前面に出てくると、冷静に考えるのが難しくなるときもあるかもしれません。そんなときは、ぜひ周りのみなさんで助けてあげてください。きっと、あなたがピンチになったとき、「感情型」の方は喜んであなたのサポートをしてくれることでしょう。

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