行動経済学者ダニエル・カーネマン(村井訳)『ファスト&スロー』(早川書房、2012年)の下巻を読み始めています。いきなりすごい話です。

新しい学説が発表されれば、当然反論もされます。会社でだって新しい企画をた立てれば、批判されるのと一緒です。まと外れ、嫌だな、と思うことはしばしばあるでしょう(私もそうでした)。カーネマンがすごい、と思うのは「敵対者同士の協力」を試みたこと、つまり自分と考えが合わない研究者とあえて共同研究をしたらどうなるか、とチャレンジしたことです。

カーネマンが選んだのは、ゲーリー・クラインという研究者。カーネマンは専門家の直感はあてにならない、という立場に対し、クラインは専門家の直感はあてになる、という立場。彼らの共同研究は何100通のメールのやりとりをし、決裂をしそうになっても7~8年に及んでシンプルな答えをだしたそうです。

出した答えは、「経験豊富な専門家が主張する直感はどんなときなら信じてよいか」に対して、「有効である可能性の高い直感といんちきである可能性の高い直感を区別するのはほとんどの場合に可能だ、という結論。別のいい方をすれば、非常に高度の知識や技術をもっている専門家ほど、知識や技術の限界を知っているということですね。

話し合うなかでカーネマンが対象にしていたのは臨床医、ファンドマネージャー、政治評論家など根拠に乏しい長期予想を試みる人たち、クラインは消防隊長、看護師など「掛け値なしに本物の知識を備えたプロフェッショナル」(この訳の意味は正直私もわかりません)と研究対象が違っていたことがわかってきたそうです。共同研究がうまくいったからといって、カーネマンはクラインと考えの好みが異なることも認めています。

考えが違う人と仕事をするのはやりにくいです。そして、仕事なんて考えの違う人とするのが当たり前のところがあるのがつらいところですね。普段会社にいると当たり前のようにコミュニケーションをとりながらしていることでも、嫌は嫌でしょうし、つらいものはつらいものですね。

それをあえて自らを実験台にして実践したところにカーネマンの勇気と偉大さを感じます。

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