おはようございます。

今日は小島寛之『文系のための数学教室』(講談社現代新書、2004年)より、とても大切なことをお伝えいたします。

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数学関係者の間で、「数学は何の役に立つのか」、ということがときどき話題になります。生徒がよく「数学なんか勉強しても、いったい将来何の役に立つのさ」という投げやりなことばを口にするので、それに説得力のある回答をしたいという思いがあるのでしょう。・・・

・・・このとき、数学関係者が「数学は役に立つのだ」という「存在証明」に躍起になることに対しても、筆者は釈然としない思いを抱いていました。なぜなら、こういう議論は、非常に残酷で危険な結論を導きかねないからです。

「数学は何の役に立つのか、何の価値があるのか」という問いの「数学」ということばを、一度「あなた」ということばに置き換えてみてください。そこには、「あなたは何の役に立つのか、生きていて何の価値があるのか」というとてつもなく残酷な問いに姿を変えるでしょう。これは決して問われてはならないたぐいの問いです。問うならば、それは人間の尊厳に対する挑戦だということを覚悟しなくてはなりません。人は、何かの役に立つために生まれてきたわけではありません。自分に価値があるかないかなど、そんなことは余計なお世話です。「何かの役に立ちたい」という気持ちは美しく尊いものですが、この主客を入れ替えて「役に立つ人になりなさい」と語られるとき、それは傲慢不遜なことば以外の何物でもありません」。

(180~181ページ)

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たとえ人の役に立たなくても、あなたには価値があります。