おはようございます。

昨日は私がセミナーの題材で使う文章をご紹介しました。あなたはどこまで内容を理解して人に語ることができるでしょうか。

伝言ゲームをすると、以下の文章は最初の人と最後の人のギャップがかなり大きいです。

そして、いかに人は考えが違うのか。人は物事をみるときフィルターをかけていること、人の話を正確に聴くのがいかに難しいのか、よくご実感いただけます。

こんな文章でした。

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なんでも、物語(ロマンス)を読んでいるうちに眠りこけてしまったある女官の不注意から、皇妃の居間が火事になってしまった、ということであった。私は早速起き上がった。・・・折から幸い月夜でもあったので、私は市民を一人も踏み潰すことなく、なんとか宮殿に駆けつけることができた。現場に着いてみると、建物の壁にはすでに梯子(はしご)がかけられ、バケツの用意も充分ととのっていたが、水を汲む場所がなにしろ離れていた。バケツは大きな指くらいの大きさで、それをみんなは必死の勢いで私に手渡してくれた。だが、火勢は猛烈で、そんなことでは何の役にもたたなかった。・・・事態はもう全く絶望的で手のつけようもなかった。この壮麗な宮殿が焼失するのはもう明らかに時間の問題であった。・・・ある名案が突如として頭にひらめいた。前の晩、私はグリミグリミという、非常に旨い葡萄酒を腹いっぱい飲んでいた。ところが、これが利尿剤としての効果は抜群だというわけだ。千載一遇の好機とはまさにこのことで、私はまだ一滴も放出してはいなかった。もえている火の側まで行って、懸命に消火作業に当たったせいか、体じゅうがかっかと熱くなり、あげくのはては体内の葡萄酒が次第に尿に利き始めた。私はおびただしい量の尿を、しかも、ぴったりと目標の場所に向かって放出した。さしもの大火も3分間のうちに完全に鎮火し、造営に長い歳月を要したという壮麗な建物の他のところもかくして延焼を免れたという次第であった。

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あなたはこの文章の意味が理解できるでしょうか。

この文章を理解するには、背景を知る必要があります。

恐らく、読書家で勉強家のあなたは、この文章のタイトルくらいはご存じでしょう。『ガリヴァー旅行記』です。

gulliver

主人公ガリヴァーが、小人や巨人や馬の国を冒険する物語です。上の文章は小人の国に行ったときのエピソードです。小人の国でガリヴァーが巨人として振る舞っている様子をイメージすれば、たぶんご理解いただけると思います。

そして、本当にこの文章を理解する上で必要なことは何でしょうか。

著者はジョナサン・スウィフトという人です。1667年にアイルランドで生まれました。スウィフトが生きた時代は、イギリスとフランスが植民地をめぐって熾烈な戦争を繰り返している時代です。「第二次英仏百年戦争」なぞといいます。アン女王戦争、七年戦争、フレンチ=インディアン戦争、プラッシーの戦い、アメリカ独立戦争、ナポレオン戦争・・・

これらの戦争の首謀者は国王です。そしてスウィフトは、戦争に反対の立場をとる人です。ガリヴァーが行った小人の国は、卵の割り方をめぐって戦争をしていたのです(戦争を始める理由はくだらない、とでもいいたいのだと思います)。その戦争をガリヴァーはちょっとした工夫でやめさせることに成功しました。そしてスウィフトは上記の文章で、戦争をふっかける王室を、宮殿におしっこをかける形で揶揄しているのです。

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さて、あなたは、「何をくだらない話をしているんだ」と思っていらっしゃるかもしれません。

私がお伝えしたいのは、人の話には背景がある、ということです。誰一人として、ことばを同じ意味で使う人はいません。もしあなたが人の相談にのる機会が多いのだとしたら、丁寧にことばの背景を理解しながら進める必要があるのです。

私もさんざん悩んできました。「私の適職を知りたいんです」と相談されたとき、そのまま相談に応じれば、泥沼いはまります。

「○○さんにとって適職はどういうイメージですか」と切り返すことで、お互いにイメージをつめることが大切です。

適職はほんの一例です。抽象的なことをいったとき、相談者が思っていること、イメージしていることを具体化して掘り下げることがとても大切だと思っています。